誤診」?

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ホームドクターで最低月に1回は受診し、血圧の薬をもらい、年に数回は、レントゲンや心電図、血液検査をして特に大きな異常もなく数年になります。

 

ある日、「検診ドック」に行きました。そこで不整脈を指摘され、精査のためにA病院を紹介され、そこでCT検査。結果、心臓の冠動脈狭窄が見つかり、バイパス手術の必要性ありと診断。その後B病院を受診。先ずは血管造影をすすめられ、検査入院。造影検査の結果、異常はなく手術の必要性はないと言う結果になりました。

 

ここまでには検診ドックを含め、4つの病院と数か月を要しています。

本人は、胸を開いて「バイパス手術」をしなければならないと言う不安の日々を過ごし、同行した家族は病院をめぐり、結果的に「異常はない」と言われ、安堵と共に医者に対しての不満や不信感すら感じています。

 

さて、これは「誤診」なのでしょうか? 何処かに問題があるのでしょうか?

 

答えは「No」です。これが医療の限界なのです。

 

     ホームドクターで不整脈はわからなかったの?

ホームドクターは日々の診療の限られた時間の中では、身体をトータルで診療していきます。言い方が不適切かもしれませんが、広く浅くになります。本人も自覚していない状態なので医師に伝える事もなく、検査の時は異常がなかったのでしょう。

 

     「検診ドック」での不整脈はなぜわかったの?検査機器(心電計)が特別の機械であったわけでもありません。通常の検診(心電図検査)では行わない負荷テスト(体を動かしてからの検査)で陽性と診断されたのです。不整脈は様々な要因で出現することはあります。負荷を与える事で発見されることがあります。異常は異常ですので精査のための検査を進められた訳です。

 

     次の病院でのCT検査では、「狭窄あり」と診断され手術が必要と判断されたのはなぜ?

CT検査は麻酔のリスクもなく有効な検査方法です。しかし万能ではありません。あくまでもつくり上げた画像です。コンピュータ上で、マトリックス(四角い図形)を組み合わせたものを線でつないで画像を作成し、デジタル化(3D処理)をします。CT値と言って、レントゲンよりも白と黒の表現を何段階に分けて表示できるので、そこにカラーをつける事で、本当に心臓がリアルに動いている様な画像が表現出来るのです。

このマトリックス(四角の図形)が大きくて数が少なければギザギザになり、小さければ小さいほどなめらかな線が描け、CT値のカラー表現が多ければ多いほど画像がリアルになり、一般的に上位機種であればある程よりリアルに表現されます。

デジタル処理された画像は、昔のフイルムの写真と比べた場合、デジカメは一見クリアーで、全体像がキレイに見えます。しかし実は細かな小さい箇所はボケます。それに比べ、従来のネガフイルムの画像は、ピントが合っている所はよりクリアーに繊細に見えます。しかし全体像はピントが合っている所とボケているところがあるのです。

CTはデジタル処理された画像なので、あくまでもつくられた画像です。限界はあります。検査には基本麻酔等も必要なく、日帰りで数分の検査で終了する利点があります。

 

     次の病院での血管造影検査では「狭窄なし」手術の必要なし??

病院で普通に撮るレントゲン検査はX線を数秒あてて撮影し静止画像ですが、透視は、X線を数分間あて続けます。先ず血管内にカテーテルを挿入。そこに造影剤を注入して血管を増強させ、X線をあて続けてモニターに映し、動画でリアルタイムに血管をダイレクトに写し出す事が出来るのです。皮膚を切開して血管へのカテーテル操作が必要なので、滅菌下での検査前の処置が必要となります。手技的には数十分ですが、処置前や処置後を含めると、鎮静や時には麻酔等で検査入院が必要になり、「リスクあり」の検査になります。また患者もドクターも、サポートする人々もレントゲンの被爆の問題が少なからずあるため、鉛の防護服を着用しての検査になります。非常に有効な検査方法です。しかしもちろんこの検査にも限界はります。

 

さて、どこに問題があるのか?

どこにも問題はありません。「誤診」ではないのです。

 

この患者は私の母親です。家族は娘で私の姉です。患者は80代の女性、様々なリスクや状態や状況を考慮し、それぞれの場所でそれぞれのドクターが最善を尽くし行った医療行為です。

 

素直に異常がなかった事に「喜ぶべきこと」なのです。

 

我々の扱う動物医療も人医療と比べてレベルの違いはありますが、基本は同じです。

所詮は人間が行う医療行為です。私の動物病院でも、他の病院や検査で診断がつかなかった疾患を診断する事が出来て治療に繋がったケースもあれば、当院でもCT検査で脳腫瘍と判断しましたが、その後全く問題なく元気に生活されている患者(ワンちゃん)もいます。検査には限界があるのです。

全ての検査や診断には、白と黒で明らかに判断出来る場合と、判断が難しいグレーがあります。グレーの場合に白と判断して悪化するよりは、黒と判断して、次のステップに進んだり、経過観察をしながら最終判断した方が良いと言う考えも意図的ではなくても、命を優先した場合医療者には働きます。それが人間です。

 

検査や治療に100%などありえないのです。

技術が進めば進むほど、情報が多くなればなるほど、検査や治療に対して様々な選択肢が増えてきますが、検査や治療方法は様々であり、「絶対」は存在せず、一長一短があるのです。

 

もちろん医療行為は、エビデンス(根拠に基づく診断方法と治療法)が原則であり、そこから外れた診断や治療法はNGですが、エビデンスに基づいた方法であっても、ひとりひとり、一頭一頭、その場の状況や状態で検査方法も治療法も変わる、異なるのです。

 

「知人がこうだったから」、「知り合いの犬があそこではこうしたから」とか、「ネットでこう書かれていたから」等々・・他人の情報は参考程度に半分聞き流す事も必要です。人医療でも動物医療を受ける上でも、迷い悩むことはあると思いますが、医療を受けると言うことは、今、この場この時に何をすることがベストか?を先ず考え、時には割り切り、時には身を任せることも必要なのです。

 また既に検査や治療を行った後に、「ああすれば良かった」「こうすれば良かった」等は、次回の時の参考にすれば良い事で、その時はそれがベストと判断したのです。選択したことに対しての後悔はしない事、振り返らないことです。

 

私の病院にもセカンドオピニオンとして来院して下さる飼主さんがいらっしゃいますが、「他の治療をしていれば良かった」とか「もっと、こうすれば良かった」とおっしゃられる方が少なくありません。しかしそれは既に過ぎた事なのです。

先ずは今、これから何をするべき事がこの子(愛犬や愛猫)に対してベストかを考えるべきです。

また、同業者の中にも残念ですが、他の病院で行った検査や治療に対して「なんでそんな検査をしたか? 治療をしたのか?」など、同業批判をして飼主の不安を仰ぐ、「技術よりも話術」が堪能な獣医師もこの業界的には少なくはありません。

話に同調してくれたと感じ、親身になってくれたと感じられる飼主様もいらっしゃるとは思いますが、人として医療者としては残念に思います。患者を多く獲得したい獣医師や経験値が少ない獣医師に多い傾向があると感じていますが、一見するとそこそこ経営者としては成功しているケースが多く「どこの業界も同じだなあ~」と個人的には感じてしまいます。

最良の病院選びは、健康である時から病院へ通い、直接会って、目と目を見てきちんと話し合い、時には冗談を言い合い互いに心を開いて信頼を築き、信用が出来るホームドクターをもつことが大切であり健康寿命を延ばし、医療行為を受ける上での不安の軽減には必要だと私は思います。

もちろん人間である以上、好き嫌いや「合う合わない」はあっても当然なのです。

医療行為も所詮は人が行うこと。    全てはgod only knows(神のみが知る)です。

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